仙台地方裁判所 昭和23年(行)19号 判決 1953年5月27日
主文
原告等の請求を棄却する。
訴訟費用は原告等の負担とする。
事実
原告等訴訟代理人は被告が昭和二十三年十二月五日附買収令書を昭和二十四年十月十三日原告小林重蔵に交付してなした仙台市長町字鹿野前六十八番田三反二畝十三歩の買収処分が無効であることを確認する、訴訟費用は被告の負担とする旨の判決を求め、その請求の原因として、訴外仙台市長町農地委員会は昭和二十二年九月中請求の趣旨記載の農地を当時の登記簿上の名義人たる原告小林の所有に属し自作農創設特別措置法第三条第一項第一号に該当する農地であるとして買収計画を定め、被告は昭和二十四年十月十三日同原告に対し昭和二十三年十二月五日附買収令書を交付した。しかしながら、右農地は原告佐藤の所有であつて昭和七年十一月二十日原告小林が常盤銀行から金員を借入れるについてその担保に供する目的を以て登記名義のみを原告佐藤より原告小林へ移転したにすぎない。従つて被告の右買収処分は真の所有者でない者に対してなされた違法がある。よつてその無効の確認を求めるため本訴請求に及んだと陳述した。(立証省略)
被告訴訟代理人は先ず、原告等訴訟代理人は曩に宮城県農地委員会を被告として同委員会が昭和二十三年三月二日になした本件農地の買収計画に対する原告小林重蔵の訴願は成りたたないとの裁決の取消を求めながら、その後宮城県知事を被告として同知事がなした該農地の買収処分の無効確認を求めるに至つたのは請求を変更するものであり右請求の変更は請求の基礎に変更があるから不当であると述べ、次に原告等の請求を棄却する、訴訟費用は原告等の負担とするとの判決を求め、答弁として、仮に、原告等主張の通り原告小林が本件農地の所有者でなかつたとすれば同原告は本件行政処分の無効の確認を求めるについて、その利益を有しないから、同原告の本訴請求はその主張自体理由がない。原告等主張の通り本件農地につき買収計画が定められ次いで買収処分がなされたことは認めるがその他の原告等主張事実は争う。右農地は買収計画が定められた当時原告小林の所有であつた。仮りに右農地が同原告の所有でなく原告佐藤の所有であつたとしてもこの種行政処分は登記簿その他公簿上の所有名義者を基準としてなさねばならないのであつて何ら違法でなく、なお又佐藤名義の登記がない以上佐藤はその所有権を以て第三者たる被告に対抗出来ないと述べた。(立証省略)